残業代請求を考えたときに、まず気にしておかなければならないのが時効の存在です。残業代の請求権は、賃金の支払日(給料日)から3年で消滅時効にかかり、請求できなくなってしまいます。時効をとめるためにはどうすればいいのでしょうか。また、その時に気を付けておくべきことは何なのでしょうか。

これについて、2024年4月22日にYoutubeでお話をした動画をご紹介します。

また、「動画を見るより、文字で読むほうが早くて楽」という方のために、全文の書き起こしを掲載します。

残業代請求、時効に負けるな!

残業代請求の時効は3年です。とりあえず時効を止めましょう。時効の止め方をお話しします。

こんにちは、弁護士の仲松大樹です。よく時効、時効という話をして、「残業代請求の時効は3年です。3年経つと請求できなくなります。3年経つ前に請求しましょう」という話をしますよね。この時効って一体何なんだという話、それから時効が迫っている時にどうしたらいいのかという話、今日はこの辺りをお話しします。

今日のお品書きです。

今日は短めになる予定ですが、残業代請求の時効は3年です。時効を止めましょう。「付加金」というものもあります。この3本建てでお話をします。

残業代請求の時効 – 時効ってなんだ?

早速入っていきますね。残業代請求の時効は3年です、というところですが、まず時効ってそもそも何なのかというところからお話しします。ここで言う時効というのは「消滅時効」という制度です。この消滅時効というのは、一定の期間権利を行使しないでいると、その権利がなくなるという制度です。つまり、残業代請求で言うと、残業代請求をしないままに、この、ここで言う「請求」というのは基本的には裁判を起こす、裁判で請求するということですが、残業代請求をしないまま一定の期間が経過してしまうと、もうその残業代については権利がなくなる、請求することができなくなりますということです。

この時効って何だということについては、それ自体について深掘りすると実は難しい議論がいっぱいあるんですけれども、今日はこの程度で分かっていただければ特に問題はないと思いますので、ここではその他は割愛をします。

と、いいつつ若干だけ分け入ってみるんですが、この請求できなくなるということについて、ちょっと補足しておきます。一定の期間が経過することで請求ができなくなると言ったんですが、これについて、そもそも一定の期間が経過すると権利そのものが確定的になくなるんだと考える見解と、期間が経過するだけで権利がなくなるわけではない、一応請求はしていいんだ、ただ相手が「時効期間が経過しています」という主張をする、これを「時効の援用」というふうに言うんですが、これをすることによってそこで初めて確定的に権利がなくなるんだと考える見解があります。

後で言った見解ですね、こっちで考えると、とりあえず10年前の残業代でも20年前の残業代でも請求はできるということになります。ただ、そうは言ってもですね、残業代請求の事件で請求をかけた時に、会社側、使用者側から時効援用がされないということはまずまず考えられないです。それで実は、裁判所に訴えを起こす時に一定のお金を裁判所に納めないといけないんですよね。この金額は請求する金額によって決まるんです。

例えば、100万円だったら1万円、500万だったら3万円、1000万だったら5万円というふうに決まっているんです。年100万残業代が出ているとして、3年分だと300万です。この場合、裁判所に納めるのは2万円ということになるんですが、とりあえず10年分訴えちゃえというふうに言って1000万請求すると、これは5万円納めないといけない。ところが1回目で「時効援用をします」と言われると、この瞬間に裁判所に納めたうちの3万円がパーになっちゃうわけですよね。それはあんまりにももったいないし、そこの部分負けるってんで悔しいんでね。ですので、基本的には時効が来ていない分、3年が経っていない中でだけ請求をするというのがまあまあ一般的なところじゃないかと思います。

残業代請求の時効は3年です

さっきから繰り返し3年という話をしているんで今更なんですけれども、残業代請求の時効は3年なんですよ。これですね、以前は2年だったんです。以前は2年で、いつまで2年だったかというと令和2年、2020年の3月31日までです。それが法律が変わって、令和2年の4月1日、2020年の4月1日からは3年ということになりました。

そのせいで切り替わってしばらくは有効期間を考えるのが面倒だったんですけれども、この動画を撮っているのが令和6年、2024年です。もう法律が変わって4年も経っていますので、今は特に迷うことはありません。3年ということだけ考えておけばいいです。

これですけれども、ちょっと条文を見ますね。

今回のテーマに関係ないところは省略をしています。労働基準法の115条です。「時効として、この法律の規定による賃金の請求権は、これを行使することができる時から5年間行わない場合においては、時効によって消滅する」と。これを見ると「5年」って書いてあるじゃないかというふうになりますよね。ところが、附則、付け足しの定めというのがあって、そこに143条の3項です。「第115条の規定の適用については当分の間、同条中賃金の請求権は、これを行使することができる時から5年間とあるのは、退職手当ての請求権はこれを行使することができる時から5年間。この法律の規定による賃金(退職手当てを除く)の請求権は、これを行使することができる時から3年間とする」と書いてあるんですよね。

残業代というのは退職手当てではない賃金ですから、3年に限定されちゃったということになります。個人的にはですね、「なんで当分の間3年間に限られなきゃいけないんだ」という部分だとか、「当分の間っていつまでだよ」というのはあるんですけれども、こういうふうに法律に書いてある以上は今はどうしようもありませんので、3年というところを前提にお話をします。

この3年ですけれども、いつから数えるのかというと、賃金の支払い日から、給料日からということになります。つまり、ここもフリップを出しますね。

今日が例えば令和6年、2024年の4月28日だとしましょう。ここから3年前の日付を出すわけです。3年前ですから令和3年、2021年の4月28日です。請求ができるのはこれ以降の分、4月28日の午前0時までに支払い日が来ている残業代については時効にかかっちゃっていますので、もう請求ができません。これに対して、これより後に支払い日が来ている残業代については請求ができるということになります。

例えば、賃金が15日締めで25日払いだとしましょう。そうすると令和3年の4月28日の午前0時までに支払い日が来ている分、つまり令和3年の4月15日締め25日払いの大抵4月分というと思うんですが、これはもう請求ができません。令和3年の4月28日の午前0時より後に支払い日が来る、令和3年5月15日締め25日払いの5月分賃金からは残業代が請求できる。つまり令和3年4月15日の残業については残業代が請求できないんだけど、令和3年4月16日の残業については残業代が請求できるということになります。

あるいは賃金が末日締めで翌10日払いであると、そうすると令和3年の4月28日の午前0時までに支払いが来ている分、つまり令和3年3月末締め4月10日払いの大抵は3月分というふうに言うんだと思うんですが、これはもう請求できません。これに対して、令和3年の4月28日の午前0時より後に支払い日が来る、令和3年4月末締め5月10日払いの4月分賃金からは残業代が請求できる。つまり令和3年3月31日の残業については残業代が請求できないけど、令和3年4月1日の残業については残業代が請求できるということになります。

この辺りはですね、順番に考えていけばそんなにややこしいしい話ではないんですけれども、こんがらがるとこんがらがっちゃいますので、こういうふうに考えてください。ということで、よろしくお願いをいたします。

今、結局何を言いたいかというと、つまり賃金の支払い日、給料日から3年が経つたびに、その3年前の給料日に支払われるはずだった残業代が時効にかかる、請求できなくなるということです。多くの場合、賃金は月払いだと思いますが、月払いの場合、ぼんやりしていると1ヶ月ごとに3年前の1ヶ月分の残業代が請求できなくなっちゃうということですので、まずはここに気をつける必要があります。

そう考えると、これは時効にかからないうちに一刻も早く残業代請求したい、裁判を起こしたいわけですね。なんだけど、いきなり裁判と言われても、残業代の計算にも提出する証拠の整理にも時間はかかるわけですよ。そもそも裁判やるのかどうかということについてそんなに早く決断できないよ、どうしようというふうになるわけですよね。

時効をとめよう – 時効の完成猶予:催告

そこで用意されている制度が「時効の完成猶予」という制度です。時効の完成猶予、以前は「時効の停止」というふうに言いましたけれども、これは読んで字のごとくではあるんですが、要するに時効が完成するのを猶予する、待ってあげますよという制度です。この中で残業代請求を考えた時に特に重要になるのが「催告」という制度です。

ここも条文を出しますね。

民法です。催告による時効の完成猶予。150条ということで、催告があった時はその時から6ヶ月を経過するまでの間は時効は完成しないというふうに書いてあります。ちょっと2項の方は省略をしますが、この催告というのは定義としては「債務者に対して履行を請求する債権者の意思の通知」というふうに言われています。要するに「支払ってくれよ」と伝える、そういうことですね。とりあえず使用者、会社に残業代払ってくださいよというふうに伝える。そうするとそこから6ヶ月間、伝わってから6ヶ月間は時効が完成しないことになります。残業代請求権が時効消滅しないという状況がとりあえず生まれるので、この6ヶ月間とりあえずもらった猶予の中で裁判を起こすということが必要になるわけです。

ここで注意点が1つあってですね、今しつこく「とりあえず、とりあえず」という話をしたんですが、この6ヶ月というのは本当にとりあえずもらった猶予に過ぎません。ですので、この中で裁判を起こすことが必要になるということなんですが、ここなんですよ。催告してから6ヶ月以内に裁判を起こさないといけない。そうしないとどうなるかというと、時効の完成が猶予されていたのがなしになっちゃって、結局時効が完成する。残業代請求ができなくなるということです。

で、大抵の場合、こうやって残業代請求権が消える時には1度に6ヶ月分が消えちゃうんです。これ、分かりますかね。つまり、今日がさっきと同じで令和6年、2024年の4月28日だとしましょう。今度は賃金が毎月20日締め末日払いだとしましょう。もう1回さっきの話を繰り返すような話になりますが、この場合、今日から3年前の日付は令和3年、2021年の4月28日です。ここまでに支払い日が来ている残業代、つまり令和3年3月20日締め末日払いの令和3年3月分賃金はもうどうしようもありません。時効にかかってしまっています。

これに対して、令和3年の4月28日より後に支払い日が来る令和3年4月20日締め末日払いの4月分賃金は残業代が請求できる状態です。なんだけれども、明後日、令和6年、2024年の4月30日が経過すると、経過するとというのは午後24時が過ぎて5月1日に切り替わっちゃうと、その瞬間に令和3年4月分の賃金は時効にかかっちゃう。残業代が請求できなくなるわけですね。これはまずいということで、今日慌てて催告を出すと、後で説明をしますが内容証明郵便で未払の残業代全部払ってくれというのを送ったとして、明日、令和6年、2024年4月29日に使用者会社に催告が届いたとします。

そうすると、この催告の効果としてこれが届いた時から6ヶ月後まで、つまり令和6年、2024年10月29日までは時効が完成しない、つまり請求ができる状態になります。これもフリップを出しますね。

令和6年の4月29日に催告をしました。そうすると、この3年前、令和3年4月29日の午前0時までに支払い日が来ていない賃金、具体的には令和3年4月30日払いの令和3年4月分賃金からについては、催告をした時から6ヶ月後の令和6年10月29日の24時、ここまで時効の完成が猶予される。この期間に裁判を起こせばいいということになります。

これ、もうちょっと分解しますね。まず、令和6年4月末が過ぎました。そうすると本来ここで令和3年4月分の賃金が時効にかかって請求できなくなるはずなんだけど、催告を4月29日にしてまして、そこから6ヶ月後の10月29日はまだ来ていませんので、まだ時効消滅しない。とりあえず令和3年4月分賃金は請求できる状態が続くということです。

次です。令和6年5月末が過ぎました。そうすると本来ここで令和3年5月分の賃金も時効にかかって請求できなくなるはずなんだけど、さっきの4月分賃金と同じで時効消滅しない。本来令和3年4月分と5月分が時効消滅しているはずなんだけど、催告の効果で権利が残っているわけです。

あと、分かりますかね。令和6年6月末が過ぎた時も同じように、令和3年6月分が時効消滅しない。4月分から残っているものと合わせて、本来時効消滅しているはずの令和3年4月分と5月分と6月分の残業代請求権がとりあえず残った状態になっています。令和6年7月末が過ぎた時も同じです。本来時効消滅しているはずの令和3年4月分から7月分までの4ヶ月分の残業代請求権が残った状態になっています。

令和6年8月末が過ぎた時、本来時効消滅しているはずの令和3年4月分から8月分までの5ヶ月分の残業代請求権が残った状態になっています。最後、令和6年9月末が過ぎた時も同じように、本来時効消滅しているはずの令和3年4月分から9月分までの6ヶ月分の残業代請求権が残った状態になっています。

さて、こうです。この状態で残業代請求の裁判をしないまま、催告をした、催告が使用者会社に届いた令和6年、2024年10月29日午後24時が過ぎちゃった、10月30日に切り替わっちゃった。そうするとどうなるかというと、今まで催告の効果で残っていた令和3年4月分から9月分までの6ヶ月分が、これが一遍に消えちゃうというわけなんですね。

つまりですね、催告を、なかなか毎月催告をするということはしないと思いますので、最初にまず催告をしたと。それで安心してぼーっとして催告の時から6ヶ月過ぎちゃうと、1ヶ月分だけじゃない、6ヶ月分の権利がガサッと、その権利がなくなっちゃうんだと。これは結構なダメージになります。ですので、この辺りはよく注意をしていただきたいと思います。それから、こういったことを考えると、催告の段階からやっぱり弁護士に相談をしておいていただいた方がいいんじゃないかと、正直なところそういうふうに思いますね。

催告の具体的な方法

そこのところの注意点、とりあえずご理解いただいた上で、催告の具体的な方法というのをここからはお話をします。さっき催告の定義というのをお話ししましたが、要するに「もらえるはずの残業代もらってないじゃないかと、払ってくださいよ」ということを使用者、会社に伝えるということです。この催告というのは相手、使用者に届いて初めて効果が出ます。届かなきゃどうしようもないというわけですね。後で時効について「催告が届いてない」とか「内容が分かんなかった」ということが言われると、これは問題になってくる。そうすると「払ってください」ということははっきり伝えておくこと、それがきちんと使用者に届いていること、それからそれが使用者にいつ届いたのかという日付、これがきちんと裁判所に出せるような証拠として残せるような、そういった形を取っておきたいというふうに思うわけですよね。

ここで証拠って何だという話については、前回の動画でみっちりとお話をしましたので、ぜひそちらを見ていただければということで、よろしくお願いいたします。

理屈上はですね、この催告は口頭でもいいはずなんですよ。「残業代払ってもらってないですよ、払ってくださいよ」というふうに言った。それでいいはずなんですが、これだと後で「言った」とか「言わない」とかといった水掛け論になってきますのでね、さっき話したように催告が認められなければ、最大で6ヶ月分問答無用で残業代請求権が認められなくなるということがあり得るわけです。使用者会社の側からしたら「ここは争っておきたい、勝てる可能性があるんだったら争っておきたい」と考えるはずです。ですから、後で水掛け論にならないようにするために、使用者から「払ってくれなんて言われてない」とか、「それ確かに言われたけど、それつい最近言われたばっかりだよ。1週間前に言われてつい最近裁判起こされたじゃないの。そんな5ヶ月も前に言われたことなんかないよ」と、そういうことを言われないようにしておく必要があります。

そういったところで、僕が一番お勧めしていて、僕自身も仕事の中で基本的にこのやり方を使っていますっていうのは、配達証明付きの内容証明郵便です。内容証明郵便っていうとね、なんかちょっと特別な、ちょっと怖い郵便みたいに思われてる節もあるんですけれども、実際のところそんなものではありません。手紙という意味、こちらの意思、伝えたいことを伝えるという機能という意味では普通の郵便と何も変わるところはありません。

違うのは何かっていうと、これは読んで字のごとしなんですけれども、郵便局がその手紙の内容について証明をしてくれる、そういう仕組みが用意されているということですね。つまりですね、さっき催告について「払ってくれ」ということははっきりと伝えていること、それがきちんと使用者に届いていること、それが使用者に届いた日付がきちんと裁判所に出せるような証拠として残るような形を取っておきたいという話をしました。このうちの「払ってくれ」ということをはっきりと伝えたということは、これは手紙の文面を見るのが一番ですよね。

ところが、この手紙を普通郵便で送ったとすると、それを使用者会社の側が改ざんをしたと、そうするとこの証拠がないということになるわけですよね。裁判で「私は確かに残業代払ってくれと言いました。その時に送った手紙の写しはこれです」って言って証拠としてコピーを取っておいたやつを出した。ところが会社から「いやいや、この時に来た手紙はこれですよ」って別の手紙が出てくる。そこには「長時間労働が辛いからやめます」とは書いてあるけれども、「残業代払え」ということが一言も書いてない。こういう改ざんした証拠が出てきちゃったりしてね。

そうすると裁判所から見ると、後から「残業代請求します」っていう手紙を書き加えたものを、裁判所に、労働者の側が出してきたのか、それとも「残業代請求してください」って書いてある部分を削った手紙を会社が出してきたのかが、裁判所から見ると分からない。結局水掛け論だ。そういうことになりかねないわけですよね。

そこで内容証明郵便を使うわけです。手っ取り早く言ってしまえば、郵便局が差し出した手紙のコピーを取っておいてくれますよっていうことです。郵便局には基本的にはどっちかに肩入れする事情なんてないわけですよね。大量に出入りする手紙の内容にいちいち興味なんか持たないですからね。そうすると手紙書き換えるなんて、郵便局には全くメリットがない。そんな面倒くさいことするなんてまずありえない。

そうするとさっきみたいな言い争いになった時に「分かりました。どっちが正しいかはっきりさせましょう。郵便局さん、保管してあった手紙のコピーちょっと出してください」。これができるようになる。そうするとどっちが嘘ついてるかが一発で分かるわけですよね。ということがあるので、内容証明郵便でやり取りした内容について、改ざんしようなんていうことについては、そもそも大抵の場合無駄になるので考えない。そういうことに逆になってきます。こういった部分で不毛な争いを一つ減らすことができる。そういうことになるわけですね。

もう一つ、配達証明を付けるということもお話をしました。この配達証明っていうのは、さっき催告について「払ってくれ」ということははっきり伝えていることと、それがきちんと使用者に届いていることと、それが使用者に届いた日付がきちんと裁判所に出せるような証拠として残しておきたいですねっていう話をしたんですけれども、この2番目と3番目、2番目と3番目に関わるところですが、郵便局がその手紙、内容証明郵便をいつどこに届けたのかということを証明してくれますよという仕組みです。

さっき言ったように、郵便局にはね、どっちかに肩入れする事情なんてありませんからね。いつどこに届けたのかについて嘘をつくこともやっぱりまずまずありえないわけです。そうすると「この手紙は4月29日には届いてるはずだ。給料日4月30日の前じゃないか」「いやいや、受け取った時はもう5月2日になってた。4月30日は過ぎてた」。こういう不毛なやり取りも潰すことができるわけです。

なので私としてはこの配達証明付き内容証明郵便っていうのを強くお勧めしているわけです。この辺りはですね、他にもいろんな方法があり得るんですが、あんまり紛れが出てもよくないので、今日の動画では配達証明付き内容証明郵便をお勧めしますっていうことだけとりあえずお話をして、ここで話を止めておきます。

この内容証明郵便なんですけれども、昔ながらの出し方です。自分で郵便局に行く、その出す手紙の本文、紙を用意して、そこに内容証明郵便の内容を書いて、それを郵便局に持っていってっていう方法もあるんですが、この内容証明郵便、自分で作るって形になると、書式についてかなり厳しい制限や指定があるんです。その指定通りに書けていないと、郵便局で「これはちょっと書式が違うんで受け付けられません」ということになって、書き直さなきゃいけない。そういうことがあって急いでる時ほど差し出せないっていうことがあり得るわけですね。

これはかなり頭の痛い問題だったんですけれども、いつからなのかな、郵便局が電子内容証明郵便というサービスを始めました。これは利用者登録とかを事前にしておかないといけないというところで、最初ちょっとやらなきゃいけないことがいくつかあるんですが、内容証明郵便を出すという点についてはめちゃくちゃ便利になりました。

書式についても、郵便局のサイトに行くとMicrosoftのWordファイル形式のひな形があるんです。で、この書式に特に変更加えずに内容だけ本文を頭からパチパチっと入力をしていけばいい。細かいことを考えなくても済むようになったんです。差し出しまで全部Web上で済んでしまう。仕事でなかなか郵便局が空いている時間に郵便局に行きづらいという場合でも、深夜でも内容証明郵便を出すことができるということで、もう今僕が出す内容証明郵便もここ数年単位で見るともう100%電子内容証明郵便に切り替えちゃいましたけれどもね。

これはかなり使いやすいシステムになりましたので、これもここで強くお勧めをしておきます。動画概要欄に郵便局のサイトリンク貼っておきますので、気になる方はそちらからご確認ください。

催告の書き方

基本的なところはこれでやることにしたと。そうするとあと考える必要があるのは、その内容証明郵便配達証明付きの内容証明郵便の本文に何をどう書くのかということ、催告の書き方ということになりますが、そこについてお話をしておきます。

これについてなんですが、一つポイントになるのは、あんまり細く細かく書きすぎないということだと思います。さっきも言いましたが、催告っていうのは要するにもらえるはずの残業代もらってないじゃないか、払ってくださいよっていうことを使用者、会社に伝えるということです。

で、このもらえるはずの残業代という部分について、「令和3年4月分」とかって書いちゃうと、これがむしろミスになったり後で争いになったりしかねない。例えば、賃金が25日締めで15日払いだというふうにしましょう。そうすると、「4月分」って4月25日締めた方の分なのだろうか、それとも4月15日に払われた方の分なのだろうか。ここで何か厄介な問題が出てくる可能性っていうのがあるわけです。

あるいは、会社によってはね、基本給とあと月ごとの決まった手当てと、その他に出来高、営業成績に比例して金額が決まる賃金が組み合わせで支払われていて、締め日は一緒なんだけど出来高の方は計算の都合で別の月になりますよとか、そういう会社もありますからね。そうすると余計にややこしいことになる。

それから、頑張って正確に書こうと思って「令和3年4月分」って書いて、それで4月分以降って書いてりゃ良かったんだけど、「4月分の残業代を請求します」とか書いちゃった。そうすると3年前の4月分の残業代については催告で時効が完成猶予されてるんだけど、その次の3年前の5月分の残業代については催告がかかってなくて時効が完成しちゃっただとかね、そういうミスが出てくる可能性もあるわけです。

ですので、この部分はもういっそ「雇われて以来、きちんと残業代が払われてないから、ちゃんと払ってくださいよ」こんぐらいの形にしておいた方がむしろいい、というふうになってきます。この辺りはですね、そんな漠然としたものではダメだと、もっと特定しろという見解、意見も使用者側、経営側、会社側からはあるんですが、まあまあ、このくらいでいいんだというのが基本的に裁判所の取り扱いだと思います。

ちょっと自信を持つために過去の裁判例で明言したものがありますので、ここも紹介をしておきます。

長野地裁佐久支部平成11年7月14日、労働判例の770号98頁に載っているものですが、「時間外手当及び深夜手当は、賃金台帳、タイムカード、現実の勤務を記載した警備勤務表に基づいて、就業規則に基づく賃金規定に定められた複雑な計算方法により算定すべきものであるところ、これらの書類は被告において所持し、原告らは被告から交付された各月の給料明細書を所持しているに過ぎないから、原告らにおいて容易に算定することができないことは明らかであるから、このような場合、消滅時効中断の催告としては、具体的な金額及びその内訳について明示することまで要求するのは酷に過ぎ、請求者を明示し、債権の種類と支払期を特定して請求すれば、時効中断のための催告としては十分であると解される」というふうに言っています。

ちなみにですね、僕が担当した事件で、これは公刊された雑誌等に掲載されていないんでちょっと引用がしにくいんですけれども、大体こんなふうにして消滅時効の中断、今でいう時効の完成猶予を認めてくれたものがあります。つまりですね、例えば貸した金返せっていうトラブルの場合、AさんとBさんの間に何口も何口もお金の貸し借りの契約があるという場合、こういう場合はありますよね。こういう場合には「金返せよ」っていうだけでは「いやいや、いつ借りたお金ですか、これがわかんないじゃないですか」と、そういう問題があるので細かく金額だとかいついつのものだっていうことを特定しなきゃいけないんだと。

だけど労働契約の場合、AさんがBさん雇うって言ったら普通は1本しか契約ないでしょ、と。人間同士のやり取りになるわけですからね。そうするとこの労働契約に基づいて賃金払えっていうのは、労働者の側で使用者に対して未払い賃金の支払いを要求しますとしか言ってなくても、会社から見りゃ何払えって言ってるのかなんて分かるじゃないか。だからそれは特定して請求しているっていうふうに評価していいんだというふうに言って、それから長野地裁の佐久支部と同じようなことをいって時効の完成猶予を認めてもらったという例が過去にあります。

この辺りを念頭に置きつつ、何について請求するのかっていうのをはっきりさせるということになりますが、最大公約数的なところでこんなところじゃないですかね。

請求書、催告の文例ということになりますけれども、まず発出日ですね。何年何月何日、宛先、何株式会社の代表取締役何々殿。それから自分の名前、電子内容証明郵便であれば判子は押しませんけれども、手書きあるいは自分でワープロで作って郵便局に持っていく場合であれば最後に判子を押すということになります。

請求書というふうにして、先ほどの長野地裁の佐久支部の判決は「請求者を明示し」というふうに言っていますので、「私は」というふうにする。「債権の種類と支払期を特定して」というふうに言っているんで、「貴社に雇い入れられて以来、時間外労働や深夜労働、休日の労働に従事してきましたが」、ここは実態に即して記載をすることになります。「貴社はこれによって発生した割増賃金を支払っていません。そこで私は貴社に対し、法律及び契約に従って賃金を正しく計算し直すこと、これに基づいて未払いとなっている全ての賃金を支払うことを求めます」。こんなところですかね。

ただ、繰り返しますが書き方の問題の他に、これを送ったらすぐに裁判の準備に取りかかる必要もありますしね。なのでやっぱりこの催告をしようっていう段階で弁護士に相談をしておいていただければというふうに思います。ということでこの部分もよろしくお願いをいたします。

付加金について

ここまで話をしてきてですね、一つ注意点があります。残業代請求をする時にですね、裁判で請求する時には「付加金」というのも合わせて請求ができます。この付加金の金額は請求、つまり裁判を起こした時から3年遡ったところまでの未払い残業代と同額までです。同額までという言い方がなかなか微妙なところで、金額は最終的に裁判所の裁量で決まります。上限が裁判を起こした時から3年遡ったところまでの未払い残業代と同額というところで頭打ちになっていて、その頭打ち上限の金額まで命令してくれるのか、それともいくらか割り引くのか、それとも全然命令してくれないのかっていうのは裁判所が自由に決めますよっていうことですね。

ちょっとここも条文を見ておきましょう。

今回のテーマに関係ないところは省略をしています。付加金の支払い、労働基準法の114条です。「裁判所は、第37条」、第37条っていうのは残業代とか休日深夜の割増賃金についてのことです。「の規定に違反した使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあった時から5年以内にしなければならない。」。で、これについても例の当分の間規定があります。

143条の2項です。「第114条の規定の適用については、当分の間、同条ただし書き中5年とあるのは3年とする」。

この付加金というのはですね、いろいろ考え方説明はあるんですが、一種の罰金ですね。法律上払わないといけない残業代をきちんと払ってなかった。それについて裁判になれば、残業代だけじゃなくって、同額までの付加金払わなきゃいけないっていう制裁、サンクションが課されるっていう、そういう仕組みを取ることによって、使用者に法律違反をさせない、あるいはそういった法律違反をしないようにする、そういうものです。

で、それを罰金として国に収めるんじゃなくて、現に被害を被った被害者であるところの労働者に支払わせることにすれば一石二鳥でしょうと、こんなようなところから出た仕組みとして準備をされているものです。

こういう仕組みになっていますんで、裁判所の実態としては、この割増賃金、残業代未払いの実情がどれぐらいひどかったのか、使用者側、会社側の悪質性はどのくらいかとか、労働者側の被害、不利益っていうのはどのくらいかとか、そういったところを裁判所がいろいろ考えて金額を決めるということになっています。

僕としては、そういうことじゃなくて、ちゃんと残業代払えよという仕組みを貫徹しようとするのであれば、付加金はよっぽどのことがない限り満額認められなきゃおかしいんじゃないかというふうに思うんですけれども、実態としてはこういうことになっています。その結果、じゃあ実際のところいくらが認定してもらえるんですか、そもそも付加金が認定してもらえるんですかっていうことはなかなか読み切れない、そういうのが実態です。

付加金は時効完成猶予できません

付加金についてはですね、これについてはそれからもうちょっと言いたいこともいくつもあるんですが、ちょっと今日はテーマに沿わないのでこのくらいにしてきます。

今日のテーマとの関係で注意、お話をしておかないといけないのは、付加金請求権は催告によっても時効完成猶予されないということなんですよ。現状そのように理解されています。そうするとですね、例えば退職直前か直後に催告で残業代の時効を止めた、その後6ヶ月経つ直前に裁判にした。この時には残業代は3年分まるまる請求できるんですが、付加金の額です。付加金の請求額、付加金の上限額は裁判をするところから3年前までで頭打ちになりますので、最大でも2年半とか2年7ヶ月分とか、そういうふうに制限されることがありえます。ここのところは注意が必要なところで、そういった意味でも催告をした後、何か戦略があるなら時間をかける、そういう必要はありますが、そうでない限りはなるべく早く裁判に持っていった方がいい、という意味でもやはり催告の段階から弁護士に相談をしていただければと、やっぱりそういうことになります。

ということで、ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございます。今日の話はここまでです。

最後に

最後に宣伝です。私は弁護士の仲松大樹、名古屋にある事務所で修行をした後、岐阜県瑞穂市にみずほのまち法律事務所という事務所を開設して仕事をしています。事務所は現在、私の父と私の2名でご相談をお聞きしています。オンライン相談も実施中です。今回の動画もあちこちで「弁護士にご相談を」という話をしましたが、私の事務所では残業代については初回相談無料、ケースによっては2回目からも無料というふうでお話をお聞きしていますので、お気軽にお問い合わせください。ちなみに実際に請求するという段階では着手金無料プランというのもご用意していますので、よろしくお願いいたします。

それでは今日はこの辺りで失礼いたします。また次の動画でお会いしましょう。